不確実性が高く、AIなどのテクノロジーが急速に進化する現代。BtoBマーケティングや事業推進の現場において、多くの企業が「組織の意思決定基準のブレ」や「外部パートナー(コンサルティングやベンダー)との関係性の再構築が迫られる局面」に直面しています。

手段やテンプレートの切り売りでは、もはや事業を根本から成長させることはできません。今求められているのは、発注者と受注者という壁を越え、同じリスクを背負って事業変容を牽引する「共犯関係」です。

本記事では、2026年3月25日に開催されたオンラインセミナー「組織に変革をもたらす共犯型フレームワークとは?」の模様をレポートします。Speeeのクライアントであり、イベントを通じたコミュニケーション変革を推進する株式会社ブイキューブの大友堅太郎氏と、SpeeeでBtoBグロースパートナー事業の責任者を務める松田尚也が登壇。

事業責任者・マーケティング責任者必見の、生々しくも本質的な「組織変革のリアル」をお届けします。

登壇者プロフィール

大友 堅太郎氏(おおとも・けんたろう)

株式会社ブイキューブ 「Oneイベント」ストラテジスト
2014年、株式会社ブイキューブに入社。2020年、イベント事業の営業マネージャーに着任。コロナ禍の顧客ニーズ変化を捉え、既存のサービスに新たな顧客価値を取り込むことで累計30,000件以上の支援実績を積み上げる。約20名規模のチームをマネジメントしながら、イベント事業のサプライチェーンを構築。顧客のニーズや環境変化に適応するサービスを実現。2025年には新サービス「Oneイベント」を発表。過去の支援実績をもとに「イベントは最強のコミュニケーション」というキャッチコピーを掲げ、顧客のコミュニケーション課題の可視化からイベントの当日運営までを一気通貫(One)で支援する体制を構築。自身もストラテジストとして顧客の課題解決に伴走する。

Oneイベント(イベントDX)
ブイキューブが提供する、イベントの戦略立案から運営まで一気通貫で支援するサービス
サービス詳細を見る

松田 尚也(まつだ・なおや)

株式会社Speee BtoBグロースパートナーズ事業 事業責任者
神戸大学工学部卒業後、2018年に株式会社Speee新卒入社。セールス&マーケティング部を経て、2021年よりWebアナリティクス事業のディレクターとして大手ナショナルクライアントを含む多数のプロジェクトを牽引。並行してCRO(コンバージョン率最適化)領域のPoCおよび新規事業立ち上げをリードし、2023年にCRO事業責任者に就任。現在はBtoBグロースパートナーズ事業責任者として、マーケティング全体を俯瞰したグロース型DXコンサルティング事業の統括を務める。事業成果(P/L)への責任を担う傍ら、サービス開発や営業戦略の策定・実行を横断的に指揮。

川戸 崇央(かわと・たかひろ)

企画・MC
編集者/株式会社コスモ・ナンバーワン 代表取締役
2010年東京大学法学部を卒業後、リクルート系の出版社・メディアファクトリーに入社。KADOKAWAにて雑誌『ダ・ヴィンチ』編集長。映像化タイトルなどベストセラー書籍の編集も手掛ける。26年にゼロイチのIP創出やクリエイティブコーチング、経営コーチング、マーケティング、ブランディング支援を事業とする株式会社コスモ・ナンバーワンを創業。

【第1部】登壇者プレゼンテーション

手段の切り売りは限界。Speeeが目指す「真のパートナー」の姿

イベントの第1部では、両社が現在提供している価値が語られました。

まず登壇したのは、Speeeの松田です。Speeeの最大の特徴は、自ら事業を創り出す「事業会社」としての顔と、BtoB向けの「コンサルティング会社」としての顔を併せ持つ「両利きの経営」にあります。

松田

「世の中には数多くのコンサルティングファームが存在しますが、我々は単なる『アドバイザー』ではありません。我々の強みは、不動産や介護領域などで自らマッチングサービスをゼロから育て上げ、拡大させてきた『実体験』という資産を持っていることです。現場のリアリティを知り尽くしているからこそ、机上の空論ではない解決策を提供できると考えています」

松田が事業責任者を務める「BtoBグロースパートナー事業」では、「筋の良い成長モデル」の提供にこだわっていると言います。最初から莫大な予算を投じるのではなく、まずはSEOやWeb広告で確実に売上を作る「スモールウィン」を創出。そこで得た投資原資で次の打ち手へと拡張していくアプローチです。

しかし、Speeeの真価はそこから先にあります。

松田

「我々は単なる『手段の提供者』には留まりません。『獲得したリードは本当に売上に貢献しているのか?』『営業成果に結びついているのか?』といった本質的な問いを投げかけます。UX改善やレベニューオペレーションの構築など、もっとも重要な『経営課題の解決』へと支援領域を昇華させていきます。

現代において、『こうすれば必ず勝てる』という絶対的な正解は存在しません。大学合格のメソッドだけを教えるような、手段やテンプレートを切り売りするコンサルティングは限界です。我々は、顧客と相互に影響を与え合いながら事業を変容させる『真のパートナー』でありたい。最後に成否を分けるのはメソッドではなく、責任を持って決断を下し実行する『人』だからです」

SpeeeのBtoBグロースパートナー事業のプレゼンテーションスライド

イベントは「点」ではなく「ハブ」。ブイキューブが仕掛けるコミュニケーション変革

続いて、株式会社ブイキューブの大友氏が登壇。「Web会議のブイキューブ」というイメージが強い同社ですが、現在は「イベントDX」を主力事業の一つとして展開しています。テクノロジー企業がなぜイベントに注力するのでしょうか。

大友

「コロナ禍を経てAIの時代が到来し、業務は劇的に効率化されました。しかしその裏で、組織の意思決定基準が揺れ動き、社員の間で『自分たちがどの方向に向かっているのか分からない』という課題を抱える企業が増えています。だからこそ、理屈抜きに多くの人が集まり、五感を使った体験の場を提供する『イベント』こそが、現代における最強のコミュニケーションであると我々は打ち出しました」

ブイキューブが提供する「Oneイベント」は、単なるイベント制作代行ではありません。企業の成長を支えるコミュニケーションのコア(OS)を構築するサービスであり、いわば「企業の中に戦略的イベント部を作る」取り組みです。

大友

「従来のイベントは、『とりあえずやる』という単発開催が多く、担当者も兼務で非効率、そして資産にならないという課題がありました。しかし現代において、イベントは『点』ではなく『ハブ』になります。

例えば、社内のインナーイベントで従業員のエンゲージメントを高め、そこで生まれた熱量をマーケティングイベントで社外へ発信し、さらにその成長ストーリーをIRイベントで株主に伝える。この一連の『価値連鎖』を設計し、得られたデータを資産に変えて次の経営判断に活かす。やりっぱなしのイベントから、未来の情報資産へと変革を起こすのが我々の強みです」

大友氏は、「我々はお客様のイベント係になりたいわけではありません。Speeeさんのように、お客様と共に事業に変革を起こすパートナーになりたいのです」と語りました。

ブイキューブのOneイベント事業のプレゼンテーションスライド

【第2部】パネルディスカッション

「共感」はどう生み出すのか?組織を作り変えるコミュニケーション・フォーマット

第2部のパネルディスカッションでは、モデレーターの川戸氏の進行のもと、「共犯型フレームワーク」の核心に迫る議論が交わされました。

最初のテーマは、「自社や顧客の組織をいかに作り変えるのか?」

松田は、クライアントの顕在的な課題を解決するだけでは事業のグロースは難しく、共にいい未来を描き、共感して意思決定していくプロセスが不可欠だと語ります。

川戸

「ビジネスにおいて『共感』を作っていくことは非常に難しいと思うのですが、どう進めていけばいいのでしょうか?」

松田

「色々な言葉で表現されますが、ビジョンや戦略も含めて、『同じ意思決定基準、コミュニケーションフォーマットを持つこと』が重要だと思います。
同じ業界のクライアントでも、会社のカルチャーやバックグラウンドによって、同じ事象を見たときに感じることは全く異なります。そこに我々が素早くアジャストし、『この数字は経営的にどう捉えるべきか』といった目線をいち早く合わせていく。同じ仲間として共に事業を進めていくための土台作りが求められています」

川戸

「実際に、ブイキューブのイベント事業のマーケティングをSpeeeが支援する中で、両社はどのようにフォーマットをすり合わせていったのでしょうか」

大友

「元々ブイキューブはWeb会議の会社だったので、ウェビナーを主にやっていました。でも『それじゃダメだ、イベント事業に変えよう』となった時、単に『マーケティングをお願いします』と発注していたら、今のような関係にはなっていなかったと思います。
『イベント事業をこういう形に変えたい』というWhy(目的)やビジョンを、パートナーであるSpeeeさんにしっかり共有し、同じ解像度を持ってもらえたことが大きかったです」

川戸

「大友さんが松田さんに『こういうことやりたいんです』という熱量の高い資料をいきなり見せられていたのが印象的でした。お二人はチャットでのコミュニケーション量もすごいと思って見ているんですが、ああいったやり取りはBtoBでは珍しいですか?」

大友

「普通はないと思います(笑)。もっと仰々しい感じが一般的ですよね」

川戸

「そういったイベント事業の変革の中で、ブイキューブさんは昨年9月に『Oneイベント』をリリースされましたが、ここには社外へのリブランディングだけでなく、社内に向けた意図もあったそうですね」

大友

「はい。ブイキューブは多角的に事業をやっているので、『イベント事業』と言っても、みんなが思い描く状態が若干ズレているんです。だからこそ、組織の変革においては、まず1丁目1番地として社内の認識を揃え、『共通言語』を作りたかったという思いが強くありました」

大友 堅太郎氏 株式会社ブイキューブ 「Oneイベント」ストラテジスト
写真1:大友 堅太郎氏 株式会社ブイキューブ 「Oneイベント」ストラテジスト

「協力」から「相互依存」へ。リスクを共有し、共に山を登る関係

続いてのテーマは、本セミナーのタイトルでもある「共犯型フレームワークとは何か?」。まず、松田が提示したのは、従来の「協力」と「共犯型」の違いを比較した図でした。

松田

「かつての協力関係は、境界線がはっきりしていて、お互いの立ち位置から機能を提供し合うものでした。しかし今は、toCでもtoBでも、相互依存の関係をどう築くかが問われています。
同じ目標を正しく追って、同じ基準で意思決定する。組織を作る上でも、私にはメンバーの力が必要で、メンバーにも私が必要。そういう相互依存の関係が最も美しいと思っています」

この松田の「相互依存」というキーワードに対し、大友氏が事前に用意していたイメージ画像は、「手錠」でした。

大友

「半分冗談で出したんですが(笑)、共犯というのは、 同じリスクを引き受けながら、同じ目的に向かって横並びで動ける関係 だと思っています。
人間って、意外と制約がないと動けないんです。手錠で繋がっていれば、共倒れのリスクがあるから共犯にならざるを得ない。『痛い思いをするかもしれないけど、この山を登るためにはここを進むしかない』という時、手錠で結ばれていれば一緒に進むしかないんです」

川戸

「『手錠』と聞くと構造的な縛りをイメージしますが、その前提には『リスクテイクの共有』があるんですね」

大友

「そうです。リスクがあるからこそ、『今回は松田さんの言うことを聞こう』とか、『そっちの方が成功確率が高いなら大友の案で行こう』と、本気で知恵を出し合える。リスクを取らないというリスクも同じものになる。これがビジネスにおける共犯関係だと思います」

境界線がなくなる時代。「事業解像度のないコンサル」は淘汰される

議論はさらに白熱し、「当事者意識のないコンサルって本当に必要?」という、ややセンセーショナルなテーマへと移ります。

松田

「結論から言うと、どんどん淘汰されていくと思います。『当事者意識』とは、 意思決定に対して本当の意味で自己決定の責任を持つこと です。クライアントの意思決定に対して、実行し切るまで責任を持ち、出た結果を次にどう繋げるかまで伴走しなければ意味がありません。
手段やテンプレートは情報過多の時代、誰でも手に入ります。不確実な領域の中で求められているのは、手段ではなく『不確実な中での高度な意思決定能力』と『実行へのコミット』です」

大友氏も、事業会社の視点から「当事者意識」を「事業解像度」という言葉で再定義します。

大友

「このテーマは、『事業解像度のないコンサルって本当に必要?』と言い換えられると思っています。昔のように『ここからここは自社、ここから先はコンサル』という境界線がなくなっている以上、事業に対する解像度がないと本質的な問題解決はできません。コンサルの方々は事業会社ではないので、最初は解像度がなくて当たり前です。だからこそ、『御社の事業をここまで深く調べ、理解しました』と言えるレベルまで踏み込んでくれるかどうか、そしてそれをコンサルティングの強みである仕組みやフレームワークとミックスしていけるかどうかが、当事者意識のあるコンサルティングにつながると思います」

松田

「問題解決において、『理想』と『現状』のギャップをどう埋めるかが重要ですが、今の時代、企業が掲げる『理想像』自体が非常にユニークになっています。競合他社とも全く違う理想を描いている中で、そこへの深い理解(解像度)がなければ、問題の定義すらできないんですよね」

外部パートナーと共犯関係を築くためには、発注者側にも「姿勢」が求められます。視聴者からの「発注者と受注者の関係になりがちな中で、共犯関係に変えていくポイントは?」という質問に対し、それぞれの視点から回答しました。

大友

「発注者がカッコつけないことですね。発注しているということは、自分たちに課題があり、できないことがあるからです。だから、課題を隠さず、包み隠さず受注者に丸見せする。正しい情報を伝えないと、相手も当事者意識を持ちようがありません。『何とかして提案をくれ』という丸投げのスタイルではなく、『ここができていない、でもこれをやりたい』と本音でぶつかることが重要です」

松田

「受注する我々の立場から言えば、実績のないうちは人間は信頼できないと思うので、まずは『スモールウィン』を積み重ねることです。ご期待いただいた部分はしっかり返す、期待以上で返す。これを繰り返していくうちに、徐々に阿吽の呼吸になり、先方が開示してくれるイシュー(課題)のレイヤーが変わっていく感覚があります。最初は『KPIを改善してほしい』だったのが、『そもそも我々の事業って…』という相談に変わってきたら、すごくいい関係になってきた証拠ですね」

松田 尚也 株式会社Speee BtoBグロースパートナーズ事業 事業責任者
写真2:松田 尚也 株式会社Speee BtoBグロースパートナーズ事業 事業責任者

今、マーケティングが果たすべき役割とは?情理のバランスと市場の創造

最後のテーマは、「今こそマーケティングが果たす役割」について。

松田

「最近、『私、マーケターです』と名乗る人が増えましたが、広告運用やプロモーションという部分的な業務だけを指してマーケティングと呼ぶのは危ういと感じています。
マーケティングの本来の役割は『市場創造』であり、現代においては『事業や企業のアイデンティティ、存在価値の証明』だと思っています。自分たちの組織が社会にどんな価値を出したいのかを決め、市場に受け入れてもらう。toCの商品企画も、toBのセールス活動も、すべてがマーケティング活動に包含されます」

大友

「私も、現代のBtoBマーケティングは企業と個人IPの掛け合わせになってきていると感じます。私自身、LinkedInで発信を直近強化していますが、やはり誰がどんな想いで語っているかが重要です。
自社商品の価値(コンセプト)を定義し、それを社外にプロモーションするだけでなく、社内のセールスやメンバーに深く理解してもらい、日々の行動に落とし込んでいく。その熱量が跳ね返り、増幅するハブとなるのが『イベント』なんです。これこそが現代型マーケティングだと考えています」

松田

「我々も過去に多くの事業を立ち上げ、そして表には見えないところで失敗も経験してきました。だからこそ、机上の空論では上手くいかないことを痛いほど分かっています。高度な仮説構築は絶対に必要ですが、同時に、泥臭く現場に入り込み、人と組織の感情を動かしていく。この『情理のバランス』こそが、机上の空論を終わらせ、事業を動かす原動力となります。
弊社のビジョンの一つに『解決法はデータに潜む』という言葉があります。データそのものに答えはないけれど、解法はそこに眠っている。データを見たときの感じ方は人それぞれですが、適切な仮説を持ってデータドリブンに検証していく。地に足をつけて現実へコミットし、実践的理論で変革を起こしていくという、Speeeらしい姿勢を表していると思います」

最後に、大友氏は力強いメッセージでセミナーを締めくくりました。

大友

「AI時代に様々なテクノロジーが発展しようと、最後に決めるのは人です。AIではこの3人の対談は作れないし、ここまでの考えを蓄積することもまだできません。変革をもたらすには、自己否定や集団否定から課題を浮き彫りにし、人が共通言語を作り、目的に向かって発信して仲間を巻き込んでいくことが絶対に必要です。皆で一緒に、企業のコミュニケーションに変革を起こしていきましょう」

パネルディスカッションの様子

おわりに

AIが定型業務を代替し、効率化が極限まで進むこれからの時代。最後にビジネスの成否を分けるのは、リスクを恐れずに自己決定し、泥臭く周囲を巻き込んでいく「人」の力に他なりません。

発注者・受注者という境界線を捨て、共通の目的に向かって共に山を登る。そんな「共犯型フレームワーク」を築けるパートナーを見つけ、あるいは自らがパートナーにとっての「良き共犯者」となることが、不確実な時代における組織変革の最適解と言えるのではないでしょうか。

Speeeでは、事業開発の実体験と高度なデータ解析力を武器に、本質的な経営課題の解決に向けて伴走する「BtoBグロースパートナー事業」を展開しています。現状の組織課題やマーケティングに限界を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。

イベント後の大友氏と松田氏の様子
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著者情報

著者: Speee Marketing Insights編集部

株式会社Speeeが運営する「Marketing Insights」は、"事業を進化させるデジタルマーケティング"をテーマに情報を発信しています。SEO、AEO、Web広告、CVR改善などの実践的なノウハウから、戦略策定や市場動向を読み解く深い洞察まで、幅広いコンテンツをお届けしています。