SESSION 01
SEOでの安定から一転。EC成長の”踊り場”で見えた新たな課題
Speeeとのお取り組みは2017年からと、非常に長いお付き合いですね。
野田様:そうですね。当時はECサイトを立ち上げたばかりで、ブランド名で検索しても公式オンラインショップが上位に表示されない状態でした。社内にリソースもなく、課題を感じていたところにご連絡をいただいたのが始まりです。そこから検索流入が安定して取れるようになり、集客基盤を築くことができました。
インタビュアー:集客面が安定してきた中で、次の一手としてCVR改善にも取り組むことになった背景を教えていただけますか?
野田様:検索流入が安定してきた中で、あとどこを伸ばせば売上に繋がるのだろうと考えたときに、日本サイトのオーガニック経由のCVRが高くないことが本国側からも指摘されていたんですね。そんな時、ちょうどSpeeeさんから新しい施策のご提案をいただく機会があって。タイミングが良かったんですよね。
インタビュアー:他の専門ベンダーに依頼する、という選択肢もあったかと思います。最終的に、CVR改善もSpeeeに任せようと思われた決め手は何だったのでしょうか?
野田様:プロジェクトを進めていくうえで施策ごとに分断するのもあまりよくないと思っていたので...。SEOで長年支援いただいているSpeeeさんにまるっとお任せしたほうが、施策を効率的に進めていくうえでも、コミュニケーションの面でも良いかなと思いました。
濵本:実際に今のプロジェクトではSEOとCVR改善で施策を明確に分けてご提案することはほとんどないですよね。一貫性をもたせた1つのプロジェクトとして進行しています。

SESSION 02
「包丁」の順位を押し上げた「SEO×CVR改善」の相乗効果
実際にCVR改善施策をスタートさせてからの成果はいかがでしょうか?
野田様:CVRはもちろんなのですが、SEOの順位にも影響がありました。当初はSEOへの相乗効果をそこまで期待して発注したわけではなかったのですが、結果的に大きな成果があったので、一緒にお願いしてよかったなと改めて思いました。
特に、長年の課題だった「包丁」というキーワードの順位が改善したことは、ブランドにとって非常に意味のあることでした。
濵本:この成果をきっかけに、SEO単体では上位化が難しいと思っていた他のビッグワードにも挑戦を始めています。
インタビュアー:まさにSEOとCVR改善両輪でのプロジェクトの価値ですね。
濵本:あと直近では「真空保存」もよい例だと思います。まずSEOでコンテンツを作成して集客の入り口を増やし、その後にCVR改善施策を重ねて売上を伸ばしていく、という戦略がきれいに実現できました。
野田様:「真空保存」はかれこれ3年くらい取り組んでいましたからね。3年前はまだニッチなキーワードだったのですが、今から対策しておけばいずれ大きな成果が得られると思い、地道にコンテンツを作ったり対策を進めていました。
濵本:キーワードが検索1位になった瞬間は歓喜しましたよね。
野田様:あのミーティングは感慨深かったですね...。3年間こつこつと積み上げてきたものが、順位そして売上という目に見える成果に繋がった瞬間でした。またこの成果から「どうすればお客様に価値が伝わり、結果として売上に繋がるか」という観点で学べたことも多くて、サイト全体の改修にも繋がっています。
松田:やっぱりSEOだけだと、どうしても解決できることの幅が狭くなってしまうのですが、CVR改善も一緒に取り組んでいくことで、注力するキーワードやページ、施策なども含めて、より戦略設計の幅が広がりますよね。
それがまさに、このプロジェクトを御社にご提案した背景でもありますし、実際にここまで成果が出ていて嬉しいですね。毎月御社の成果状況をワクワクしながら見ています。

SESSION 03
「ユーザー目線」と「定量的なデータ」。本社を動かしたブランドの”共通言語”
ここからは、外資系企業ならではのプロジェクトの進め方についてお伺いします。本国との連携において、難しさを感じる場面はありましたか?
野田様:ドイツ本国は別のSEOコンサルと取り組んでいるのですが、基本的にはその考えをグローバル全体に落としたいという方針なんですね。ただ、日本は言語や文化的な側面が大きく異なり一緒に動くのが難しいので、Speeeさんと組んで進めているという状況なんです。
一方で開発リソースを本国が持っているため、施策の判断はどうしても「グローバル全体へのインパクト」が基準になります。 そのため、「日本市場特有の事情なので」という理由だけでは、なかなか優先順位を上げてもらえないという壁はありましたね。 まずは日本でやってみたい、と思っても「順番待ち」になってしまうことも少なくありません。

インタビュアー:そうした状況の中で、Speeeとの取り組みでお力になれている点はありますか?
野田様:グローバル全体ではPDP(Product Detail Page:商品詳細ページ)のPV数をKPIとしていて、その中間指標でページ間の遷移率なども追っているのですが、そこにしっかりヒットするということを、Speeeさんが毎月用意してくださるレポートやデータやロジックをもとに説明できている点はありがたいですね。
濵本:弊社との取り組みがグローバルでやりたいことと一致している、プラスに働いているんだと感じていただけたことで、よりチーム感をもって進められるようになったと思っています。一緒に進めてきたサイト改善での気づきが、グローバル全体に展開されたという話もつい先日伺って、 日本での一歩が世界的なインパクトに繋がったのだと、非常に嬉しかったです。
インタビュアー:Speeeとしてご提案する際に工夫している点はありますか?
濵本:「ユーザー目線」と「定量的なデータ」を使い分けながらご提示することです。グローバル全体でも日本でも目指す先は「ユーザーに商品の魅力を伝える」ことなので、まずは「ユーザー目線」をぶらさずに提案の軸においています。そのうえでA/Bテストなどを行いながら、実際のデータを根拠として持って進めるようにしていますね。

野田様:本国側もフレキシブルではあるので、こういった議論ができることでより施策が進めやすくなっていると思います。特に世の中にはいろいろなグローバルメーカーがある中で、弊社が取り扱うキッチン用品は各国の料理・食事の文化に依存しやすい部分があるので、「日本のユーザーが何を求めているか」をしっかり分析し施策まで落とし込めると、本国側もスムーズに動いてくれますね。
SESSION 04
“ラバー”に慢心しない。ファンと向き合いながら、未来の顧客を育てるECへ
ここまでのお話を伺うと、SEOやCVR改善という施策レベルだけでなく、より上段のブランド戦略にまで議論が広がっているように感じます。
濵本:もはやSEOやCVR的にどうという話はあまりしていないですよね(笑)。どういうユーザーをとっていきたいか、そのユーザーはどういうことを考えているのかといった議論をここ最近は特に活発にしています。
野田様:「ツヴィリング」、「ヘンケルス」...それぞれのブランドを買う人たちはいったいどういう人たちなのかを1つ1つ改めて議論しましたね。ブランドによっても全然違うので。私たちのお客様にはそれぞれのブランドに「ラバー」と呼ばれるような熱心なファンの方が多くいらっしゃるので、そのお客様たちの理解を深めることは何より大事です。
またそこからより広いお客様にどうブランドの魅力を伝えていくかという点は、常に課題だと思っています。包丁であれば、「別のメーカーのものを使ってきたけど、ちょっとランクアップしたいな」と思っている人たちにどのようにアプローチしたらよいのか。マニアックになりすぎず、「良い包丁で切るとおいしくできる」ということをどう伝えていったらよいのか。非常に難しいなと思っています。

濵本:直近では「STAUB」ブランドでも同じような議論をしましたよね。「プロ感を出しすぎず、”いいもの感”をどう伝えるか」。「プロ向け」というイメージが先行すると、どうしても敷居が高くなってしまうので。「STAUB」は御社の商品の中でも特にブランドとして確立されているラインなので、そのブランドの世界観を維持しながら、より広い層にアプローチしていくのは難しい領域だなと感じました。
松田:ご提案している時にも感じていたのですが、御社のような製品のECには2つ難しさがあると思っていて。1つは、御社が高級ブランドとしてのポジションを確立されている中で、ネットですぐにユーザーが購入するような価格帯ではなく、ましてや頻繁にリプレイスするわけではない商品をどう売っていくか。もう1つは、使うまでは価値がわからない商品をどう売っていくかというところですね。
野田様:本当におっしゃる通りで、いまだに模索していますね。ただ最近は良いものを買いたい人がサイトに訪れて、ツヴィリングを知ってくれるだけでもよいのかなと思っています。ブランドECは、単に商品を売る場所ではなく、カタログ的な要素もあると思うんですよね。
濵本:「一人でも多くの人にブランドの素晴らしさを知ってもらうきっかけの場所」ですよね。もちろんサイト上で購入いただければよいのですが、サイトで商品の魅力を深く知り、結果的に実店舗で購入する、というお客様もいらっしゃるはずです。だからこそ、「どんな人に、どういう価値を届けたいか」というブランドの根幹に関わる部分から野田さんたちと議論させていただき、それをサイト上のコミュニケーションに落とし込んでいくことを大切にしています。
野田様:売上だけに軸足を置きすぎると、ブランドの世界観が失われてしまうこともあると思っています。一方で売上が上がることでメディアとしての価値が高まる側面もある。ブランドと売上のバランスを取りながらサイトを作っていきたいなとは思っています。ブランドのファンを育てる、そしてファンがきちんと買い物ができる、サイトをそんな場として作っていきたいですね。

SESSION 05
これからも事業成長を加速させるパートナーとして
8年以上という長きにわたるお取り組みを振り返って、改めてSpeeeを評価いただいている点や、パートナーとしてさらに期待することをお聞かせください。
和佐原様:担当の方がどなたになっても、提案の質が高いなと感じています。施策を進めるうえで不明点がほとんどなくて...。施策の内容はもちろん、「なぜこれをやるのか」という背景まで含めて、いつも分かりやすく説明してくださるので、納得感を持ってプロジェクトを進められています。これからも引き続きよろしくお願いします。
濵本:ありがとうございます。とても嬉しいです。
野田様:私は実はSpeeeさんとSEOの取組がスタートした年に入社したのですが、当時はECサイトの売上が低迷している状態でした。そんな中でずっと実店舗よりも売上を上げることを目指していたんです。Speeeさんとのお取り組みでその目標を達成することができたのは本当に嬉しかったですし、感謝しています。先ほどあったように、最近はブランドやユーザーの議論がたくさんできていることもありがたいなと思っているので、これからもこの調子で一緒にプロジェクトを進めていきたいですし、成果をより伸ばしていきたいですね。

濵本:最近、実はよくSNSの活用についてもお話させていただいています。ユーザーがサイトに流入してくる経路や、購入に至るまでの行動は、時代と共にどんどん変化していきます。これからはWebサイトの中だけでなく、SNSなども含めたお客様との全ての接点を連動させて一貫したブランド体験を設計していけるように、たくさん議論させていただきたいです。
松田:我々としては、ブランドECとしてのベストプラクティスを御社と確立させていきたいですね。今後デジタルネイティブ世代が増えていくにつれ、御社のような高級な商品もWebで購入するような流れにはなっていくのではないかと思っています。そんな時に、どういうサイトであるべきなのかはもちろん、どういうプロモーション戦略で行くべきなのかという視点で、パートナーとしてより踏み込んだ議論を増やしていきたいですね。
インタビュアー:本日は貴重なお話をありがとうございました。今後とも、ぜひよろしくお願いいたします。

インタビュー本文中に記載の企業名・役職・掲載情報等は、2025年8月時点のものです。








